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1.東北新幹線,盛岡以北のトンネルの概要
東北新幹線は,東京から盛岡までの496kmがすでに開業しており,1991年より盛岡・八戸間約90kmの建設を行っている.また,1998年3月12日には八戸・青森間が認可された.盛岡・八戸間では21のトンネルがあり,約74%の延長を占める.また,八戸・青森間でも19トンネルが計画され,その区間の延長の約59%を占めている.それゆえに,本新幹線の建設においては,安全かつ合理的なトンネル掘削がより重要な鍵となっている.これらのうち,延長が2,000m以上のトンネルが盛岡・八戸間で8トンネル,八戸・青森間で5トンネルあり,特に岩手トンネル(25,810m),八甲田トンネル(26,455m)といった超長大トンネルが計画・施工されている.
盛岡・青森間の新幹線ルートの地質は,先第三紀の粘板岩,砂岩,花崗閃緑岩,第三紀中新世の安山岩,凝灰岩,砂岩,鮮新世の未固結砂層,第四紀の火山性堆積物など多様であるため,トンネル掘削は硬岩地山,軟岩地山および土砂地山のそれぞれに対応した工法で進められている.
2.膨張性軟岩地山におけるトンネル支保と二次覆工
−岩手トンネル−
岩手トンネルの中間部から終点方(北側)には,新第三紀中新世の凝灰岩類が分布する.これらの凝灰岩類は図1に示すように,膨張性地山の特徴を示している.この区間において,切羽の前方地質の確認のために水平ボーリングを実施したが,採取されたボーリングコアが均等な板状に破砕されるコアディスキング現象が見られた(図2).

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図1 岩手トンネルの凝灰岩類の物性
太い実線:凝灰岩
細い点線:砂質凝灰岩
太い破線:膨張性の基準値,この破線の外側が膨張性を示す
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図2 水平ボーリングで見られたコアディスキング
このような凝灰岩質地山においては,土被りの増加に伴って,山鳴りや切羽の崩落が生じ,掘削時の内空変位量が300mm以上に達した.トンネルに作用する上載荷重が岩盤の引張り強度以上と推定され,トンネル周辺の地山が塑性化したと考えられる.このような特殊地山における支保パターンは解析に基づいて設計を行い,トンネル周辺地山の破壊による塑性化を抑制するためにロックボルトを高密度に打設した(図3).ロックボルト軸力測定の結果,側壁部のロックボルトに20tf前後の軸力が生じ,ロックボルトを多数本打設することにより変形抑制の効果があることが確認された.

図3 岩手トンネルの塑性化地山における支保パターン
また,一次支保後も変位の増加が見られたため,二次覆工についても地圧が作用することを考慮して設計を行った.まず,Voigtの3要素力学モデル(式(1))を仮定して二次覆工打設後の変位量を推定した.

ここに,δt :時間tだけ経過した後の内空変位量,δe:弾性変位量,α:クリープ変位量,β
:収束に関する係数(遅延係数),t:時間,である.次に,二次覆工打設までの日数がTの時のδt
と,t=∞の時のδ∞とから,二次覆工打設後の増分変位量(Δδ)を式(2)より推定した.

一方,計測される一次支保後の変位増分(ΔHl)と逆解析より求まる地山応力の増分(ΔσxΔσy)より,式(3),(4) から二次覆工に作用する荷重を求めた.


この推定された荷重から二次覆工に発生する断面力を算定した.この検討から,二次覆工後の変位速度が大きい箇所では,二次覆工としてSFRCを採用している.またクラック発生の追跡調査の結果,無筋コンクリートでは二次覆工打設前の変位速度が0.05mm/月以上の場合にクラックが生じるが,SFRCではクラックが生じていないことが確認された.
3.硬岩地山における掘削 −渋民トンネル−
盛岡付近では先第三系が分布し,盛岡の北東の姫神山周辺に白亜紀の花崗閃緑岩が分布する.この岩石の一軸圧縮強度は1,305〜1,463kgf/cm2,見かけ比重は約2.7,試料の弾性波速度は5.4〜5.8km/sである.
渋民トンネルでは,この花崗閃緑岩が掘削対象地山であり,このような硬岩地山の塊状部分では,経済性を考慮した支保パターンとした.断層に伴う破砕帯や節理面などの不連続面が発達する部分では,ロックボルト本数や吹付けコンクリート厚の増加によりトンネル変形を抑制した.このような硬岩地山でのロックボルトは,主に縫い付け効果が期待される.ロックボルト軸力測定の結果,その一部分に大きな軸力の発生が認められ,岩塊の不連続面での分離を抑制していることが確認された.
4.未固結土砂地山における地質状況と補助工法
−金田一トンネル−
岩手・青森県境の三戸周辺には,第三紀鮮新世の固結程度の低い砂層が分布する.金田一トンネルの北側では,この低固結の砂層が土被り厚さ50m以深に分布する.
一般的に,細粒分含有率が10%以下,均等係数が5以下の砂質土は流動化しやすいと考えられており,本トンネルに分布する砂質土もこの特徴を有する.また,この砂質土の相対密度と限界動水勾配の関係は,地下水流により著しく流動化しやすくなる特徴を示している.このため,掘削時の切羽の不安定化や天端の崩落が懸念されたため,先受けパイプや注入式先受け工により安定化を図った.
5.長大トンネルの調査 −八甲田トンネル−
八甲田トンネルの大部分は,第三系の安山岩類,凝灰岩,砂岩・礫岩およびこれらに貫入する火山岩類からなるが,青森方の坑口付近は八甲田火山起源の火砕流堆積物およびローム質堆積物からなる.また,周辺には上北鉱山などの鉱床が点在する.
本トンネルについては3ヶ所で調査坑による調査・試験を実施した.本トンネルの大部分を占める第三系の安山岩,凝灰岩は,一軸圧縮強度が600〜1,600kgf/cm2あり,七戸方の小坪調査坑,中間部の唐川調査坑では変形量やゆるみ範囲も小さく,比較的安定した地山と想定される.しかし,亀裂が比較的多く,その割れ目に多量の地下水が存在し,唐川調査坑では最大800l/minの集中湧水が発生した.一方,トンネル中間部では,周辺の鉱床に伴う鉱化変質のため,黄鉄鉱を比較的多く含み,掘削ずりからの酸性水などによる環境への影響が懸念された.しかし,黄鉄鉱の大部分は安定しており,環境への影響はほとんどないと推定されるが,一部には外的要因により酸性水が溶出する可能性も考えられ,これを管理・抑制する手法を検討している.
一方,青森方坑口付近の非溶結の火砕流堆積物は,帯水層となっており,切羽の不安定化が懸念される.梨の木平調査坑では約400l/minの突発湧水で切羽の崩壊が生じるなど,度々湧水に伴う崩壊が発生した.また,トンネル変位量も比較的大きく,その収束にも時間を要した.このようなことから,この付近の施工には,小断面分割施工法などとともに,水抜きを兼ねた先進ボーリングや薬液注入工法などの補助工法が検討されている.
6.おわりに
東北新幹線,盛岡以北は様々な地質条件の下でのトンネルが掘削あるいは計画されている.その中には,岩手トンネル,八甲田トンネルといった延長が25kmを越える長大トンネルや,地質条件が悪いと想定される箇所もあり,困難なトンネル工事が予想された.このような状況下においても,技術的にも経済的にもより合理的でかつ安全なトンネル掘削を行い,より安定したトンネルを建設することを目標に工事が進められている.
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