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1.計画概要
奥只見発電所増設計画は、既設の奥只見ダムに貯えられた水を利用して、新たに発電設備を増設し、ピーク対応供給力として20万kWの出力の増強を図るものであり、平成11年7月に本格着工し、平成15年6月に運転開始を予定しており、現在工事中である。
計画地点は、国の天然記念物イヌワシ等の希少猛禽類が生息し、豊かな自然が保たれた環境にあり、工事の実施にあたっては、希少猛禽類等に対する種々の環境保全対策を実施している。
奥只見発電所増設計画における増設放水路は、増設機の使用水を、約3.4km下流の只見川(大鳥調整池)に流下させるものであり、環境保全対策の中で工程的な制約を設ける中、設計・施工面での工夫を行い、工程を確保しつつ鋭意工事を進めている。
本稿では、増設放水路工事について、工程確保の観点から行った設計面での対応を中心に紹介する。
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計画諸元
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既設
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増設
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流域面積 (km2)
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595.1
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発電方式
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ダム水路式
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利用水深 (m)
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60
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25
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最大出力 (MW)
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360
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200
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最大使用水量(m3)
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249
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138
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有効落差 (m)
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170.0
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164.2
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図-1 奥只見発電所増設計画 全体平面図
2.地質
放水路地点の地質は、地質構造区分上では足尾帯に属し、地表部では中・古生代の粘板岩等の堆積岩が主体として分布しているが、変斑レイ岩、変玄武岩、蛇紋岩をオリストリス(異地性岩体)として包含する複雑な構造を呈する。個々の岩体は、不規則に粘板岩中に分布し、連続性が乏しいのが特徴である(事実、増設放水路で確認された地質は、隣接する既設放水路の地質分布と比較し、出現位置等が大きく異なる結果となった。
変斑レイ岩、変玄武岩は比較的堅硬な岩体であるが、一部の粘板岩はこれら岩体部との境界部で顕著なせん断変形(鏡肌)、破砕を被り、大量の湧水を伴うことが確認されている。蛇紋岩は放水口付近に分布し、地すべり地形を形成し、全般に脆弱であることが判明していた。
3.トンネル概要
(1)工程条件
奥只見発電所増設計画における増設放水路は、増設機の使用水量(最大138m3/秒)を、自由水面を持つ無圧水路として3445m下流の増設放水口を経て只見川(大鳥調整池)に流下させるものである。
増設放水路工事に課せられる工程条件は、平成15年6月の運転開始を可能とするべく平成14年12月に工事を完了すること、さらには平成13年11月から翌14年6月にかけて、放水口部に設置したコンクリート製造プラントから地下発電所へのコンクリート運搬路としての利用を可能とするべく平成13年11月までに全線を貫通することである(表-1参照)。特に後者の条件は、イヌワシ保護の観点から、営巣期には営巣地周辺の既設道路の通行を自粛していることと、地下深部であることから、イヌワシの営巣に対する影響がなく通年施工が可能な地下発電所のコンクリート工事を実施することを両立させることの必要条件であり、全体工程の中でも重要点に位置付けられる。

表-1 奥只見増設放水路 工事工程
(2)設計
1)断面形状
増設放水路の断面形状は図-2に示すように、平坦なインバートを持つ上部半円下部矩形断面を採用している。水理特性の面からは、断面形状は円形に近いほど有利であるが、先に述べた工程上の制約により、後続する覆工等との並行作業を可能にするため、このような断面形を採用したものである。

図-2 奥只見増設放水路 トンネル断面
増設放水路の覆工は、施工性に優れ工程上有利な吹付を採用している(放水路終端付近は土被りが薄い等によりセントルを用いたRC覆工構造を採用している)。
吹付は、施工性に優れるという長所を持つ反面、粗度係数が大きく、同一の通水能力を得るためには、必要内空断面が増大するという短所を持っているため、これを極力抑えるべく、スプリングラインまでの側壁は打込みのコンクリートとし粗度の改善を図った。
設計に用いたマニングの粗度係数n は、打込みコンクリートではn =0.0125、吹付コンクリートではn
=0.024とし、複合断面においては等価粗度を用いた。
n = {( Pini3/2)/( Pi)}3/2
ここに、n は等価粗度係数、ni は各粗度係数、Pi は各粗度係数に対応する潤辺を表す。
2)覆工仕様
吹付覆工の設計については、経済性も考慮し、地山の岩盤性状に応じて差別化することとした。覆工に求められる力学的条件は、@最大使用水量時の発電水の水圧(静水圧)に対して安全であること、A負荷急増時、サージングにより短期的に圧力水路状態となる場合の水圧(内圧)に対して安全であること、さらにはB将来的にも水路の健全性が保たれることの全てを満足することである(図-3参照)。

図-3 吹付覆工+側壁の力学的条件
吹付覆工の仕様としては斑レイ岩、変玄武岩を中心とする岩盤良好部に適用する鋼繊維を含まない普通吹付(T型:標準厚さ7cm)と、亀裂の多い粘板岩等の岩盤不良部に、通常のRC覆工と同等に近い信頼性を持つことを前提に適用する鋼繊維補強吹付(U型:標準厚さ15cm、次項参照)の2種を設定し(表-2参照)、構造計算を行った。T型(岩盤良好部)とU型(岩盤不良部)の違いは地盤反力係数(部材に配置するバネ支承のバネ係数)の値によって、構造計算の中で差別化されている。また、T型については、岩盤良好部は長期的な見地においても耐久性に影響を与えるような外力変化の可能性が極めて小さいと判断し、地山上載荷重は考慮しないこととした。
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表-2 吹付コンクリートの仕様
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種類
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設定強度
N/mm2
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C+F
kg/m3
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鋼繊維
混入量
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普通吹付
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圧縮 24
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350
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−
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鋼繊維
補強吹付
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圧縮 24
曲げ 6
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425
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0.85vol%
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断面力計算の結果、T型においては内圧が、U型においては地山からの上載荷重(片側載荷)が構造上クリティカルな荷重条件となっている。
3)覆工範囲の判定
各覆工仕様による施工範囲の判断について、これを掘削前に行うことは困難であることから、掘削後の一次支保内空を一定とし、掘削時及び掘削後にトンネル内の地山状況を把握した上で、吹付覆工の仕様を判定する方法を採った。それゆえ、覆工後のアーチ部の内径は、仕様(吹付厚)の違いにより異なる。
判定要素としては、地山状況を表す諸元として、岩種、岩級、変位量(天端沈下、内空変位)、地質専門家による切羽観察を選定した。覆工範囲判定の手順は、まずこれらの判定要素それぞれにランクを設け機械的に仮決めを行い(一次判定)、次にこれを地質的見地にフィードバックさせ、本地点特有の崩落を誘発する地質境界付近の強い変形を被った鏡肌状粘板岩等の分布や性状等に関する地質専門家の意見や、時期的に湧水が最も多い雪解け期の坑内湧水状況を踏まえて、岩盤の長期的安定性を総合的に判断した上で確定させた(図-4参照)。

図-4 覆工仕様の判定フロー
なお、一次判定から確定への過程において、一次判定では現在の状況からT型(岩盤良好部)とされた場合でも、粘板岩で湧水がある等、将来地山の風化により上載荷重が発生し普通吹付での覆工が長期的には不安視される箇所については、標準厚さ10cmの鋼繊維補強吹付(U−型)を行うことで対応した。
4)鋼繊維補強コンクリート
先にも述べたように、亀裂の多い粘板岩などの岩盤不良部については、通常の打込み覆工と同等に近い信頼性を持つことを前提に鋼繊維補強コンクリート(Steel Fiber Reinforced Concrete;SFRC)の吹付を採用し、曲げ強度及び曲げタフネスの向上を得ることとしている。
なお、補強材の選定に先立っては、鋼繊維とポリプロピレン系繊維との現場吹付試験による比較検討を実施しており、曲げ強度及び曲げタフネスへの効果が大きい鋼繊維を採用したものである(図-5参照)。

図-5 鋼繊維補強コンクリートの特徴
鋼繊維の混入量については、目標とする曲げ強度(6N/mm2)を得るために吹付覆工内に残留すべき鋼繊維混入率を当社研究センターでの試験結果より判断し、これに現場吹付試験結果から推定されるリバウンドロス(約3割)を考慮して0.85%とした。
(3) 施工
増設放水路トンネルの掘削は、上口及び下口に2本の作業坑を設け、上口からは1切羽で約1000m、下口からは2切羽で約2400m(上流側約2100m、下流側300m)の施工を行った。貫通条件である平成13年11月までの実質作業期間は短く、かつ全体工程の中でも貫通が重要点に位置付けられており、迅速かつ確実な施工が求められたため、ノネル雷管+ANFO爆薬の使用による効率的な爆破、施工延長の長い下口工区においてはコンテナダンプによる効率的なずり処理方法などの工夫がなされ、予定どおり貫通することができた。
また、コンクリート工は、掘削中の平成12年9月からインバート、平成13年7月から吹付覆工、同9月から側壁の施工を順次開始し、平成14年10月末に作業坑閉塞を含めて全て完了した。
4.今後の展開
平成14年12月現在、放水路に係る工事はすべて終了しており、平成15年春からの発電設備の試験を行った後、6月より運転開始される予定である。
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