Rock Net Japan

イベント報告

Event Report

 

岩の力学 News No.074


34回岩盤力学に関するシンポジウムパネルディスカッション「これからの岩盤工学」

 

東電設計 宇野晴彦


  2005.1.6,7の両日に開催された第34回岩盤力学に関するシンポジウム(主催:土木学会岩盤力学委員会、共催:岩の力学連合会、材料学会、資源・素材学会、地盤工学会)において、岩盤力学委員会活性化に関する特別小委員会の活動報告がパネルディスカッションの形で実施された。

 会場には岩盤力学に関するシンポジウムへ訪れた100名を越える参加者が集まり、委員会報告の後、活発な討議が行われた。以下に討論会の内容について報告する。

 

[開会挨拶] : 西脇小委員長(東電設計)

 活性化に向けて次のような課題に応える委員会活動の方向性を定めて行きたいとの挨拶があった。

岩盤工学のニーズは、保守、海外事業など色々あるが、従来とはニーズが異なるので、デマンドサイドに立った要素技術の再構築が必要である。

個別の技術課題に対応するためにも現状の技術水準を整備する必要がある。

社会から声のかかる委員会、社会貢献できる委員会を目指し、フィールドの技術者に有益な情報を発信する必要がある。

 

[委員会報告]

 1) 「岩盤力学シンポジウムの現状等」

宇野晴彦委員(東電設計)

シンポジウムの投稿論文数、参加者数推移
1993年をピークに下降し、ここ数年は横ばい状態

他関連シンポジウム
 岩盤力学に関連するシンポジウムが多数あり、活性化するには当シンポジウムの特色を出すことが重要

岩の力学連合会将来構想検討特別委員会
 内外シンポジウム事業、創造的提案推進事業、表彰制度、国際情報発信事業(ジャーナル、RockNet)を基金により推進

 

 2) 「特別小委員会活動経緯および集約結果」

日比谷啓介委員(鹿島建設)

 当委員会では下記の活性化に対する課題を集約した。

技術ニーズへの対応に関する課題
a.知的 · 人的財産の活用が困難、b.未解決課題の存在、c.異分野情報へのアクセスが不十分、
d.維持管理技術が未成熟、e.基準類の整備が不十分

プロジェクトの創造に関する課題
a.国際的な競争力の弱さ、b.技術の伝承が困難、c.ニーズの積極的な発信をしていない、
d.シーズ創造型分野への進出

社会経済環境への適合に関わる課題
a.技術力が中央に偏在、b.技術が時代の変化に追随していない、c.技術者の責任の所在が不明確、
d.国民の不信が払拭されていない

 

 3) 「研究 · 教育の見地からの活性化策」

清水則一委員(山口大学)

研究と教育の目的
 社会貢献(課題解決、イノベーション)、次世代育成

岩盤工学における研究課題
 従来の課題、社会に必要な課題(放射性廃棄物処分、防災 · 環境)、
これからの課題(分野を越えた課題)

活性化に向けて
 ボーダレス化、戦略広報活動、分野横断連携、産学官連携の人材育成、
困難はチャンスへ転換

 

 4) 「公共事業における技術伝承および説明責任の現状」

山口嘉一委員(土木研究所)

公共事業における技術伝承
 性能規定設計や他分野技術の導入、シニアエンジニアの活用、
個別ダムの技術 · ノウハウの蓄積 · 伝承、現場重点主義

公共事業の説明責任向上
 行動指針策定により “従前よりさらに分かり易いものへ改善する”、
“分かりやすい情報を積極的に提供、共有する”を目標に実施

 

 5) 「構造物の維持管理における岩盤科学の役割と期待」

太田岳洋委員(鉄道総合技術研究所)

現象理解 · 現状把握の困難さ
事例 · 施工情報のデータベース化

災害 · 変状予測の困難さ
 物理探査 · 地球化学 · 環境科学分野等との連携

維持管理への投資効果の不信感と不明確性
 定量的なリスク評価法の確立
 調査法を含めた維持管理 · 補修方法の体系化

 

 6) 「建築構造物としての岩盤地下空洞の計画とデザイン」

近久博志委員(飛島建設)

岩盤地下利用
 構造特性、内部環境特性、心理特性の利点を活用

建築構造物としての岩盤空洞
 地上よりも有利な地下構造物の実現、環境保全 · 自然災害に有利な施設の構築、
岩盤技術の効率的利用

岩盤技術のニーズ発掘 · シーズ創出
 設計法の基準化、デザイン力向上、規制緩和、建設コスト削減の実現

 

[討論会]

 委員会報告の後、パネラーと参加者による討論会を実施した。討議内容の概要は次の通りである。

1) 活性化への課題、原因に対する対応策、活動について

 会場意見

活性化に向けた活動については、個人でなければできないこと、学会 · 委員会でなければできないことを整理するべきである。近久委員が報告された文化施設への岩盤地下空間の適用を例にすると、心理学分野と土木分野の連携については、学会同士が行うのは無理であり、民間や大学で個人が行った方がよい。一方、科研費の申請をどの分野へ出せば良いかなどは学会が行った方が良い。個人でできないことを仕分けして、学会 · 委員会がリーダーシップをとって行って欲しい。(建設工学研究所 · 櫻井先生)

 委員回答

配布資料の「活性化アクションプランのプライオリティ」の中で、自己解決性として評価項目を設け、委員会活動で解決できるものについて、プライオリティを与えている。(宇野委員)

土木学会は産学官の連携がやり易いと考えている。一言に産学官連携といっても、世間一般で言うものと土木で言うものは異なると考えている。土木では、教育プログラムを例にしても、現場との連携がやり易い。(清水委員)

土木学会には、異分野との融合を目指す萌芽的研究を行っている研究者や技術者が悩みを相談できる学会になって欲しいと考えている。(近久委員)

地下空間委員会では、心理小委員会を発足し、バリアフリーや空間心理に関する活動を進めている。世間もそれを認知し、比較的多額の科研費をもらっている。一方、岩盤力学委員会は、力学とついていることもあり、そのような活動を認知させることが難しい。今後、岩盤力学委員会でも、様々な活動を行っていることをもっと発信する必要があると考えている。また、活性化に向けた活動としては、岩盤力学委員会でテーマを公募しているが、ほとんど応募がないことが一つポイントだと考えている。つまり、誰かやってくれるのでは、というのではなく、自分でやるとう方向に持っていく必要がある。(大西岩盤力学委員長)

2) 活性化に向けての意見について

 今日の委員会報告の中では取り上げていなかったが、地方の現場で働くフィールドエンジニアが十分なサポートを受けていないことが重要な課題の一つにある。この課題も含め、会場よりご意見を伺いたい。

 会場意見

地方では、土木学会そのものが何をするところであるか認知されていないということが課題である。宇都宮を例にとると、行政主導で年1回、土木技術者の交流会を開催しているが、その中で自治体の若手技術者が、入庁していきなり現場の管理をまかされるが、経験がないため困っているという話を聞く。また、大谷石の採石跡地の安全対策に取り組んでいるが、その安全性について、安全率の説明など、住民の説得が非常に難しい。土木学会には、大きなプロジェクトの対応ばかりではなく、こういった地方の問題に対し、地元の住民を説得できるような機能を持って欲しいと思う。(宇都宮大学 · 清木助教授)

この討論会の資料やパワーポイント及び議論の内容を、本日参加できなかった人など、もっと広く世間にアピールできればよい。岩の力学連合会の「Rock Net」を活用していただくのも良い。さらに、一般の人でも見ることのできるシステムを構築していければ良いと思う。(神戸大学 · 芥川助教授)

この討論会で、パネリストの方には、各分野の見地から意見を述べていただいたが、委員会の内部でもっと議論をして詰めれば、さらに良い案が出てくるのではないかと感じた。委員会の中でさらに検討を進めてから、再度声をかけて欲しい。また、委員会の活性化も重要ではあるが、日本として岩盤工学をどう活性化させれば良いかという視点からも検討して欲しい。また、岩盤工学に関する委員会が分散していることもネックになっていると思う。岩盤力学委員会が日本の岩盤工学を活性化させて欲しい。(電力中央研究所 · 日比野顧問)

 

[まとめ]

フィールドで、意思決定しなければならない人、苦しんでいる人を助けることが、委員会活動の大きなウエイトを占めていると考えている。委員会としてどのようにしていくのが良いか、これから内部で詰めていくところである。活動は網羅的にはできないので、優先順位をつけ、選別して行う。上手くいっているところ、個人でできるところはよく、顕在化していないような問題を扱うようにしたい。問題を抱えている人に伝わるようにしたい。(西脇小委員長)

これまでの検討結果および本日の会場からのご意見を踏まえ、今後、委員会の活性化に向けた活動項目を絞込み、5月の委員会答申に向けて検討を進めていきたい。以上で討論会を終了する。(宇野委員)

 

 お忙しい中、討議に参加していただいた方々に心より感謝いたします。(活性化に関する特別小委員会一同)

 


Copyright (c) 2004 JCRM All Rights Reserved