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岩の力学 News No.078


北陸電力株式会社

 


1.会社概要

当社は電力事業の再編成による昭和26年の会社設立以来,北陸地域の発展に貢献すべく,平成17331日現在,水力発電所115箇所(最大出力1814kW),火力発電所5箇所(最大出力440kW),原子力発電所1箇所(最大出力54kW)を運用しています。また,送電線路亘長は3,200km(うち地下109km),配電線路亘長は 41,543km(うち地下1,079km)となっています。

 

2.当社と岩盤力学との関わりについて

1)概要

当社における岩盤力学の諸問題を取扱う代表的な場として,水力発電所(ダム,トンネル)および原子力発電所の設計・施工が挙げられます。特に,地下式発電所を建設した有峰第三発電所及び岩盤に立地する志賀原子力発電所の計画,調査・試験,設計,施工にあたっては,岩盤力学に関する種々の技術を活用しております。

 

2)有峰第三発電所

昭和358月,社運を賭けて開発した,高さ140m,有効貯水量2億m3,堤体積157万m3の有峰ダムが完成し,発電を開始しました(7発電所,計26.76kW)。その後,当社は有峰ダムを利用し,急増する電力需要及びピーク時の需要に対応するため,有峰第一(26万kW),第二(12kW)及び第三(2万kW)発電所からなる合計40万kWの新系列(有峰再開発)の建設に着手(昭和534月)しました。

有峰第三発電所は,横軸フランシス水車を内蔵する地下発電所として計画し,工法としては,地下空洞が比較的小規模であり,地質も不透水性であることなどから,吹付コンクリートとロックボルトの併用工法によるNATMを採用(コンクリートによる覆工は行わず,施工断面をそのまま仕上面としている)しました。

 

空洞の設計にあたっては,岩盤のジャッキ試験および引抜きせん断試験,AEによる初期地圧の測定,およびこれらのデータを用いたゆるみ領域の計算,定常浸透流の解析を行っています。

 

3)志賀原子力発電所

当社では,地球環境問題への配慮と長期にわたる電力の安定供給を図るため,志賀原子力発電所の建設を進めてまいりました。建設地は能登半島中央部の西海岸に面しており前面では景勝地『能登金剛』に連なる岩礁が美しい海岸線を形成し,背後には緑豊かな丘陵が広がっています。出力54kW1号機が平成57月に運転を開始し,続いて我が国最大級である135.8kW2号機(平成183月に運転開始予定)の建設に着手しました。2号機の完成をもって,北陸で要求される最大電力の約6割をクリーンな水力及び原子力で供給することが可能となります。

 

 

@調査及び研究

原子力発電所の安全上重要な建物・機器等は,十分な支持力があり,滑り等が生じない強固な地盤上に建設することにしており,地盤の健全性は,FEM解析等により確認しています。

また,北陸地方に分布する新第三紀中新世の凝灰角礫岩,角礫岩状安山岩のボーリングコアや,それを模擬し作成した人工の岩石を用い,岩石の力学的性質に及ぼす礫の力学的性質,礫率の影響等について研究しました。

 

A海底トンネルの構築,大規模鉛直掘削

志賀原子力発電所の設計にあたっては,自然環境との調和を目指し,レイアウトや構造形式に様々な工夫を施しました(「自然と人へのやさしさ」を実現した施設として,平成175月,土木学会技術賞を受賞)。その一つが,敷地前面の岩礁海岸,県道をそのまま残すため,冷却用海水の取放水口を沖合いに出すとともに取放水路にトンネルを採用したことであり,次の検討により達成しています。

取放水路海底トンネルは,土被りが非常に薄く,かつ透水性の高い岩盤での施工となるため,大量の湧水が懸念されました。そこで,1号機の海底トンネルでは,湧水対策として青函トンネルで開発された止水注入工を併用したNATMを国内で初めて採用しました。この施工にあたっては,掘削断面の変化を計測するA計測と,断面変化と地山内部や各支保部材の応力と関係を把握し,支保構成の適正を判断するためのB計測を行っており,A計測については,一軸圧縮強度から算定される限界ひずみに基づいた値を,また,B計測については,各支保部材の許容応力に基づく応力値をそれぞれ管理基準値として設定しています。なお,A計測の基準値には,最終変位量と最大変位速度を用いることとし,2号機においては,1号機施工時のデータを基に,本地点での岩盤条件に応じた相関式から設定しています。

 

 

さらに,2号機では,施工初期の計測断面におけるロックボルト軸力の計測の結果,天端では軸力がほとんど発生していないことが判明したため,天端ロックボルトを削減した場合の地山応力及び支保部材応力を,地山のクリープ特性を考慮した掘削逐次解析が可能な非線形弾性解析により評価し,後の施工においてそれを実現しています。なお,解析用物性値のうち変形係数とポアソン比については,計測結果に基づく逆解析により算出しています。

次に,半地下式として地上高を抑えた建屋も,自然環境との調和のため工夫した構造形式の一つであり,その基礎掘削の設計,施工においても岩盤力学が役立っています。

2号機の基礎掘削は,隣接する1号機の運転に影響を与えないよう実施する必要がありました。このため,掘削工法の選定にあたっては,1号機の定期検査中に発破掘削試験および機械掘削試験を実施し,振動影響,掘削効率,経済性の観点から総合的に判断しました。その結果,発破掘削に比べて経済的に有利となる大型重機を用いた機械掘削を採用しています。また,掘削法面については,敷地の有効利用,掘削量の低減,仮設構台削減等の観点から親杭とグラウンドアンカーによる土留工を用いた鉛直掘削工法としました。基礎掘削の規模は,総掘削量約72万m3,最大掘削高約32m,掘削周長約1,100mです。

 

 

基礎掘削の施工にあたっては,掘削壁面地山の安定性を確認するため,親杭にひずみゲージや傾斜計,グラウンドアンカーに荷重計,さらには岩盤中に地中変位計を設置し,リアルタイムで掘削壁面地山の監視を行いました。その結果,施工中の掘削壁面変位による岩盤のひずみは,試験結果で得られた破壊ひずみよりも小さく,弾性範囲内で変位していることを確認しました。

 

 

しかし,予測解析時と計測結果の掘削壁面地山の挙動が異なっていたため,計測結果より逆解析を行いました。その結果,当サイトでは掘削時における掘削壁面地山の弾性係数はグラウンドアンカー緊張時の弾性係数に比べ約1/5となり,岩盤変形試験結果の低応力レベルでの除荷過程で定義する弾性係数に近い結果を得ました。

 

 

 

3.今後の取り組み

これまで当社における岩盤力学の研究は,主として電源開発にともなって実施してまいりました。

近年は電力需要の鈍化とともに発電所建設の機会が減少し,培ってきた岩盤力学に関連する調査,設計,施工技術を生かす場が減ってきております。一方,発送変電設備の保守において,これまで以上に,健全性評価の確立と最適な保全方法の立案などの技術が土木技術者に求められています。

今後は,これまでの設備の新設に重きをおいた研究のみならず,保守を視野に入れた岩盤関連技術の研究にも積極的に取り組んでいきたいと考えております。


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