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1 会社概要
当社は電力事業の再編による昭和26年の会社設立以来,九州地域の発展に貢献すべく,平成17年3月31日現在,水力発電所138箇所(最大出力237万1千kW),火力発電所10箇所(最大出力1,118万kW),原子力発電所2箇所(最大出力525万8千kW),内燃力発電所39箇所(最大出力40万2千kW),地熱発電所5箇所(最大出力20万8千kW)を運用しています。また,送電線路こう長は9,672km,配電線路こう長は131,153kmとなっています。
2 電源ベストミックスと揚水発電
当社は,電源開発に当たっては,供給の安定性(エネルギーセキュリティの確保,電力品質の確保),経済性及び環境への適合を総合的に勘案し,原子力を中核とした「電源ベストミックス」を目標としております。
揚水については,電源脱落事故や負荷急増時などにおける電力品質の確保及び電源設備形成に当たっての総合経済性を考慮して,10%程度を目標としています。
3 揚水発電所の建設
小丸川発電所(図-1)は,当社が宮崎県に建設中の最大出力120万kW(30万kW×4台)の純揚水式発電所であり,平成11年2月に工事着手し,平成19年7月に30万kW(T期-1),平成20年7月に30万kW(T期-2),平成22年7月に30万kW(U期-1),平成23年7月に30万kW(U期-2)の営業運転開始を目指しています。
 

図-2 小丸川発電所計画平面図
本計画(図-2)は,小丸川の支流大瀬内谷川の最上流部に上部ダム(アスファルトコンクリート表面遮水壁型ロックフィルダム:高さ65.5m)を,小丸川の中流部に下部ダム(コンクリート重力式ダム:高さ47.5m)を築造して,上部調整池と下部調整池の間の落差646mを約2.8kmの水路で連結し,発電と揚水を行うものです。
1)地形地質の概要
当地点は,標高1,000m以上の峰々とV字谷で構成された急峻な九州山地の東縁に位置しています。発電所を建設する小丸川は,宮崎県中央部を南東へ流下し,高鍋町で日向灘へ注ぐ一級河川です。
計画地点の地質概要は,以下のとおりです。
計画ルートには,日向層群(砂岩・頁岩)とこれに貫入する花崗閃緑岩体が基盤として分布する。
新生代古第三紀始新世〜漸新世の四万十累層群の日向層群は,花崗閃緑岩体を境に東西に分かれ,西側は成層した砂岩・頁岩が分布し,東側は砂岩をレンズ状に含む頁岩が分布する。
2)上部ダム・調整池の概要
上部調整池は,小丸川支流大瀬内谷川最上流部の河床標高約750m〜810mの地点で,小丸川本流とこの西側を同じ方向に流下する一ツ瀬水系岩井谷川に挟まれた大きな山体の頂上部に位置しています。当地点には,日向層群の砂岩・頁岩が基盤として分布し,両岸尾根の緩斜面や河床付近の低地にアカホヤ火山灰や崩積土が基盤を覆って分布しています。そのため,尾根部地山の厚さが最小で50mと薄く風化も進んでおり,また,底盤部においても20Lu以上の高透水ゾーンが点在していることから,上部調整池の構造は「アスファルト全面表面遮水壁型」を採用しました。
上部調整池の形状は,地山を切土・盛土により整形し,左右岸尾根部の増厚,遮水壁面積の低減,舗設基盤面の凸部をなくすこと(凸部は遮水壁の弱点となる)等を総合的に勘案して,四つの曲面部を有する形状としました。
また,ダム上流側(調整池側)の勾配は,遮水壁舗設の施工性を考慮して1:2.5,下流側は滑りに対する安定性から1:2.0としました。掘削総量は約670万m3で,このうち約425万m3を大瀬内ダム,かなすみダムをはじめとする盛土に利用しています。
地山の整形後の施工となるアスファルト遮水壁の舗設面積は約30万uで,国内最大の全面表面遮水壁型です。また,遮水壁の構造は,斜面部で5層構造(上部遮水層×2層,中間排水層,下部遮水層,レベリング・マカダム層)で厚さは30p,底面部については3層構造(上部遮水層,中間排水層,下部遮水層)で厚さ26pとしています。
3)地下発電所・水路系の概要
水路系ルートの地質は,日向層群(砂岩,頁岩)と,これにルート中央部でルートにほぼ直交する形で貫入している木城花崗閃緑岩の幅約300mの岩脈状岩体を基盤としています。この木城花崗閃緑岩は,新第三紀中新世に活動した尾鈴山火山深成複合岩体の西側縁辺部に位置する衛星岩体です。発電所本体空洞は,この概ねCH級の花崗閃緑岩の岩脈中に位置させています。
@発電所の配置と断面形状
地下発電所空洞は,地下構造物では最大のものとなり,その成否が発電所の経済性を左右するため,慎重に配置を検討しました。地質調査の結果,水路中央部を横断する形で概ねCH級の花崗閃緑岩の岩脈が存在することから,この花崗岩体中に設置しています。
また,発電所空洞の長軸方向及び位置を決定する際は,(1)不連続面の方向性,(2)初期地圧,(3)地質境界部からの距離について検討し,地下構造物を花崗岩体中の中央部に配置するとともに,空洞長軸方向を水路線形に直角に配置しました。発電所の断面形状は,きのこ形・たまご形・弾頭形のうち,以下の理由により,当社では初めて弾頭形を採用しています。
・ゆるみ領域が小さく空洞の安定性が高い
・掘削量が少なく経済的である
・アーチ部の工期が有利である。
・岩盤力学の進歩・設計技術の進展を背景としたNATM工法の実績増
A発電所本体空洞掘削工事
当発電所の発電所本体空洞は,地下約400mの岩盤中に建設される,幅24m,高さ48m,長さ188m,掘削容積約16万m3の大規模地下空間です。断面積は約1,000uで通常の道路トンネルの10倍以上の規模となります。空洞の支保工は,地山自体のもっている保持力を最大限に活用するNATM工法に基づいた支保設計を行い,吹付コンクリート,ロックボルト,PSアンカーを主要部材としました。
発電所本体空洞の掘削工事は天井アーチの3ステップと盤下げの13ステップの計16ステップで構成され,平成13年4月から約2年間をかけて掘削工事が完了しています。掘削中の施工管理は,周辺岩盤の地質や挙動をリアルタイムに観察・計測し,基本計画(設計・施工)に反映させていく情報化施工を適用しました。
岩盤の挙動は,天井アーチ,側壁ともに岩盤の割目が多いゾーンでの変形が顕著に現れましたが,情報化施工計画に基づき,切羽の進行に対応した日常管理や掘削ステップの進行に対応したステップ管理を行い,逐次,PSアンカーの追加補強などを行うことで,予定工期内で掘削を完了しています。
B水圧鉄管の設計
水圧鉄管には,最大10.30MPa(105sf/p2)の内圧が作用するため,上部及び下部斜坑においては内圧の一部を鉄管周囲の岩盤に負担させる岩盤負担設計を採用しています。この場合,管内水を抜いた際に生じる地山の浸透水圧による外水圧により,岩盤負担の効果を十分に得られないため,鉄管の周囲に排水管を設置し外水圧の影響を低減させるものとして計画しています。
水圧鉄管に用いる鋼材は,採用実績の多い80キロ級高張力鋼(SHY685NS-F)までの材料に加え,国内では2例目となる高張力鋼HT100を採用(分岐部では国内では初めて分岐管の全てにHT100を採用)することとし,コスト低減を図ることとしました。
4)下部ダムの概要
下部調整池は,小丸川中流域の標高80〜130mに位置しています。調整池を形成する山体の地形は急傾斜を呈し,標高は右岸で約800m,左岸で約300〜500mです。ダムサイトの両岸斜面は,斜度35°〜45°の急峻なV字谷です。ダムサイトの地質は,日向層群の砂岩を主体とする砂岩・頁岩互層の同斜構造となっており,厚さ5〜30p未満の頁岩を伴う数10pから5m厚の砂岩がN40〜60°Eの走向で上流へ約35°傾斜して分布しています。ダム基礎の岩盤は,左右岸アバット部に開口性の緩みが見られるCL級が浅く分布する他は,河床部において地表からCM級以上の良好な岩盤が出現しています。また,設計上考慮すべき断層も認められません。
下部ダム工事は,先ず仮排水トンネルを掘り,上・下流に仮締切を設置して河川を付け替えた後,アンカー等により法面対策を施しながら,法面上部から順次河床部まで基礎掘削を行いました。コンクリート打設は,放流設備が多いことおよび合理化施工を考慮してレヤーブロック工法とし,経済性(法面対策費),施工性,環境面(改変面積が小)を考慮してタワークレーンを採用しています。
また,下部ダムでは,洪水吐として日本最大の油圧シリンダ式クレストゲートを設置しました。
4 現状と今後の計画
平成18年5月末現在の工事総合進捗率は,約73%であり,土木関係は,下部ダム試験湛水および上部ダムのアスファルト遮水壁の舗設を終え,上部ダム試験湛水を実施しています。また,電気関係は,1台目のポンプ水車・発電電動機の据付をほほ終了し,機器単体検査を実施中であり,2台目はポンプ水車の据付を実施しています。
今後は,電気関係諸試験および有水試験を実施し,平成19年7月の初号機運転開始を目指しています。
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