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[巻頭言]
「岩盤工学と私」
高橋美昭 (原子力発電環境整備機構)
昨年,中国雲南省とフィリピンの農村を訪ねる機会を得た.水牛が牽く箱に母子3人が座ってゆっくりと村を移動する姿.満天の星空以外に全く明かりのない村道をひたすら歩いていく子供達の姿.今の自分の暮らしとは全く異なる世界.社会資本整備が異なることによる格差.この時,これまでの日本の技術者達の功績を想った.そして,その土台の上にいる自分が成すべきものは何かを考えた.
プロジェクトを進める技術者として自然・科学を理解し,工学を用い,環境を想い,人々と語り,新たな社会基盤を整備する.「自分はどこまで突き詰められたか」「さらに何が出来るか」謙虚な心と挑戦する気持ちが求められる.
環太平洋火山帯の一部で4つのプレートが交差する位置にある日本.その日本で岩盤工学に関わる科学者や技術者達.地球の歴史に学び,地下を科学し,人々の暮らしを支えてきた.こだわる専門は違っても皆それぞれ夢はきっと果てしない.
私達が取り組むのは日本における高レベル放射性廃棄物の地層処分事業.相手となる地下の岩盤は多くの分野の学問を必要とする.微生物さえ無視し得ない.しかも変動帯に位置する日本の地質構造.処分場を造る岩盤は何億年も安定した大陸にあるわけでもなければ何百キロも人が住まない砂漠にあるわけでもない.諸外国ほど簡単にはいかない.そんな日本固有の条件に挑戦できる私達は幸せである.課題は尽きない.私にとって岩盤工学はフィリピンでの星空のように果てしなく,そして深い.
1.トピックス
今回は最新の学会参加報告を含め,岩盤に関するトピックスとして2件をご紹介いたします.
1) 低レベル放射性廃棄物の余裕深度処分施設の調査について
鈴木義和 (日本原燃株式会社)
日本原燃株式会社では,青森県六ヶ所村において低レベル放射性廃棄物埋設センター,ウラン濃縮工場,高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターを操業中で,再処理工場をアクティブ試験中であります.このうち低レベル放射性廃棄物埋設センターは,1992年から操業を開始しており,浅地中ピット処分対象低レベル廃棄物を対象としています.本稿では,この浅地中ピット処分対象低レベル廃棄物より比較的濃度の高い廃棄物である余裕深度者分対象低レベル廃棄物を対象とする余裕深度処分施設に係わる調査状況の概要について報告いたします.
(これ以降,詳細はHPでご覧ください)
http://www.jsce.or.jp/committee/rm/news.html
2) 第4回アジア地域岩盤力学シンポジウム(4th ARMS)参加報告
企画小委員会委長 岸田潔(京都大学)
第4回アジア地域岩盤力学シンポジウムが,2006年11月,シンガポールで開催されました.このシンポジウムは,ISRM
International Symposiumも兼ねており,アジアからだけでなく世界各国から多くの参加者がありました.岩盤力学委員会前委員長の大西教授(京都大学)の基調講演もあり,盛況でした.
(これ以降,詳細はHPでご覧ください)
http://www.jsce.or.jp/committee/rm/news.html
2.書籍等の紹介
企画小委員会委長 岸田潔(京都大学)
岩の試験・調査方法の基準・解説書
平成16年度版 岩盤の工学的分類法(JGS3811-2004)・同解説
地盤工学会,2004
本書は,岩盤の工学的分類に関する地盤工学会基準・規格とそれの解説である.岩盤分類は,地域,構造物,業種により異なり,統一されたものがないのが現状である.さらに,それらの分類により出てきた評価によって,構造物の設計がなされるため,国際的に統一するのが極めて難しいものである.本書は,地盤工学会の岩の試験・調査規格・基準化検討委員会で策定されたものある.ベースには,2003年に策定されたISO-14689 Part
I-Identification and description of Rockに沿ったものである.そもそもISO-14689 Part Iは,骨子となる内容は,日本の提案であり,ここで紹介する基準の作成に当たったメンバーが,中心的に活動したものである.この岩盤分類は,将来議論が開始されるであろうISO-14689 Part III-Classification and description of Rockに備えたものである.様々な背景から国際的に統一することが難しいと想定される岩盤分類の策定に,大きく寄与するものと考える.
解説は,非常に内容が充実している.写真も多く使われており,地質学的な要素も十分に盛り込まれたものとなっている.基準の解説という枠に留まらず,岩盤分類・岩盤地質学の教科書的な趣のあるものである.
3.会議予定
【国内の会議】
1)
第62回土木学会平成19年度年次学術講演会
日 時:2007年9月12日(水)〜14日(金)
場 所:広島大学東広島キャンパス
リンク:http://www.jsce.or.jp/committee/zenkoku/
2)
第42回地盤工学研究発表会
日 時:2007年7月4日(水)〜6日(金)
場 所:名古屋国際会議場
リンク:http://www.jsce.or.jp/committee/zenkoku/
3)
第37回岩盤力学に関するシンポジウム
日 時:2008年1月10日(木)〜11日(金)
場 所:土木学会
リンク:http://www.jsce.or.jp/committee/rm/ronbun/simpo/top_001.htm
【海外の会議】
1)
1st North American Conference on Landslides and Society
日 時:3-8 June, 2007
場 所:アメリカ合衆国・ベイル
リンク:http://www.mines.edu/academic/geology/landslidevail2007
2)
Rapid Excavation and Tunneling Conference (RETC 2007)
日 時:10-13 June, 2007
場 所:カナダ・トロント
リンク:http://www.retc.org
3)
Oil and Gas Asia 2007 (OGA 2007), the 11th Asian Oil, Gas, and
Petrochemical Engineering Exhibition
日 時:11-14 June, 2007
場 所:マレーシア・クワラルンプール
リンク:http://www.oilandgas-asia.com/
4)
ISRM 11th International Congress on Rock Mechanics
日 時:9-13 July, 2007
場 所:ポルトガル・リスボン
リンク:http://www.isrm2007.org
5)
EIT-JSCE Joint Seminar on Rock Engineering
日 時:17-19 Sep. 2007
場 所:タイ・バンコク
その他の会議については,岩盤力学委員会ホームページの「会議予定」をご覧下さい.
http://www.jsce.or.jp/committee/rm/calendar2.html
4.法人会員のページ
土木学会法人会員による「岩盤工学等の分野で得意とする技術情報等の紹介」を目的とした「法人会員のページ」です.今回は関西電力株式会社からの紹介です.
<関西電力株式会社>
関西電力では低廉で安定した電力を供給するため,数多くの発電所,変電所等の電力設備を建設し,運用しています.特に岩盤分野では黒部ダムをはじめとする数多くのダム,地下発電所空洞,岩盤斜面,トンネル等があり,これらの設備の建設と維持管理に当たっては,当社と共にグループ会社であるニュージェック及び環境総合テクノスが保有する最新技術を駆使してきました.
不連続性岩盤における地下空洞の安定解析では,不連続面のすべりやはく離挙動を等価な連続体モデルとして取り扱うEQRモデル(Equivalent Rock-bolt Model),MBCモデル(Micromechanics-Based Continuum
Model)及び解析メッシュ上に不連続面を直接モデル化するDEM(Discrete Element Method)があります.また,不連続性岩盤斜面の落石・崩壊防止のための解析としてDEMやDDA(Discontinuous
Deformation Analysis)を用いて奥多々良木発電所増設の地下空洞解析や黒部川の岩盤斜面解析に適用しております.
施工においては非破壊でかつ簡便に岩盤中の低比抵抗部(断層・破砕帯)を確認するための「マルチ周波数領域電磁波探査(FDEM)」を有し,河川堤防および斜面の地盤構造評価やトンネル切羽前方の弱層確認に活用しており,既に数多くの実績を有しております.「逐次配合切替方式グラウチングシステム」は,グラウトミルクの濃度を連続的に変化させる可変機能によりグラウト時間の短縮を図ると共に,グラウトミルクを循環利用するため廃棄ミルク量を削減できることから,今後各種のグラウト工事に活用する予定です.
関西電力では,これらグループ企業を含めた総合的な技術を活用することにより,国内のみならず海外においても信頼性と低コストを両立した発電設備の建設と運用に寄与しています.
詳しくはこちらをご参照下さい.
http://www.kepco.co.jp
http://www.newjec.co.jp
http://www.kanso.co.jp
[編集後記]
年度末の忙しさにかまけて発信が遅くなりましたNo12号をお届けいたします.早々に原稿をいただいておりました方々に深くお詫び申し上げます.
季節は梅雨間近となってまいりました.東京に住む私としましては,近年恒例となってきましたゲリラ豪雨が心配でなりません.JR四ツ谷付近,京急横浜付近で斜面が崩れ電車が止まったこともありました.今まで大丈夫であった斜面がいつ崩れるかわからない状況です.
岩盤屋の出番ではないでしょうか.人命,財産を守るために我々の技術力が活かせることをせつに望む今日この頃です.(中村一樹)
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ニューズレター編集担当:中村 一樹(岩盤力学委員会企画小委員会幹事)
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