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1.J-POWER(電源開発株式会社)会社概要
J-POWER(電源開発株式会社)は、1952年(昭和27年)に日本の経済発展を支える電力エネルギーを開発·供給する目的で特殊法人として、電源開発促進法に基づいて政府により設立されました。以来今日まで、水力発電所、石炭火力発電所、地熱発電所を設計·建設·運転し、電力会社に販売する卸電気事業者として国民の生活と産業活動を支える電力供給の一翼を担って参りました。また、全国の電力会社をつなぎ日本全体の電力供給ネットワークを形成するために欠くことのできない超高圧連系送電線を建設し、安定的かつ効率的な電力供給システムの構築に寄与して参りました。
この結果、2003年3月31日時点で、当社は水力発電所59ヶ所·8,550.5MW、火力発電所8ヶ所·7,824.5MWの合計67ヶ所·総出力16,375.0MWの発電所を保有·運営するに至っています。また、送電線は亘長2,400kmにのぼっております。
さらに、国内で培った電力技術を活かし、1960年から海外諸国の電力関連プロジェクト(59ヶ国·215件)で調査·設計·施工監理など多様なコンサルティング事業も展開しています。
2003年6月国会において、当社の設立根拠法である「電源開発促進法」の廃止が決定し、これにより当社が完全な民間会社となることが法的に確定しました。当社は今後、早期の株式公開を果たし、名実ともに完全な民間会社となるべく最大限の努力を行って参ります。
2.当社と岩盤力学との関わりについて
当社は50年以上にわたり、発電所建設を通じて岩盤力学に関する技術開発の蓄積を行って参りました。特に水力地下発電所建設の実績を多く持ち、同時に発電所建設を通じて得られた岩盤力学に関わる調査·設計·施工技術の開発も実施してきました。また、当社は大間原子力発電所計画を推進中で、この発電所は岩盤に立地する計画ですが、日本は世界有数の地震国であることから、原子力発電所基礎地盤の耐震安定性を評価することが重要となります。このため、詳細な岩盤調査·試験、地盤安定解析を行い、岩盤力学に関する技術開発の発展にも深く関わっております。
表-1に当社が所有あるいは関連している水力地下発電所ならびに岩盤立地発電所(計画中含む)について示します。
表-1 当社が所有·関連している水力地下発電所ならびに岩盤立地発電所 (計画中含む)
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発電所名 |
完成年 |
発電所基本緒元 |
地 質 |
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長さ(m) |
高さ(m) |
幅(m) |
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国
内 |
奥只見発電所 |
1960 |
90 |
41 |
22 |
斑レイ岩 |
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御母衣発電所 |
1961 |
78 |
43 |
23 |
石英斑岩 |
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御母衣第二発電所 |
1963 |
31 |
32 |
17 |
石英斑岩 |
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小森発電所 |
1965 |
37 |
28 |
14 |
砂岩 |
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七色発電所 |
1965 |
51 |
46 |
19 |
砂岩 · ホルンフェルス |
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大津岐発電所 |
1968 |
21 |
28 |
21 |
花崗岩 |
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長野発電所 |
1968 |
70 |
42 |
20 |
礫岩 |
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池原発電所 |
1972 |
122 |
43 |
20 |
ケイ質粘板岩 |
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新豊根発電所 |
1972 |
141 |
47 |
22 |
黒雲母花崗岩 |
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沼原発電所 |
1973 |
131 |
46 |
25 |
花崗閃緑岩 |
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下郷発電所 |
1988 |
171 |
46 |
31 |
細粒砂岩 · 閃緑岩 |
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沖縄海水揚水発電所 (注1) |
1999 |
40 |
32 |
16 |
千枚岩 |
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奥只見増設発電所 |
2003 |
46 |
41 |
20 |
斑レイ岩 |
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大鳥増設発電所 |
2003 |
45 |
50 |
22 |
砂岩 |
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大間原子力発電所 |
計画 · 建設中 |
原子炉建屋平面形状 60m×57m
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火山砕屑岩 |
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海
外 |
トルコ国 · ハサンウールル (Hasan
Ugurlu) |
1980 |
119 |
45 |
21 |
凝灰岩 · スピライト |
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タイ国 · ラムタコン (Lam Ta Khong) |
2001 |
175 |
49 |
25 |
シルト岩 · 砂岩 |
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ペルー国 · ユンカン (Yuncan) |
建設中 |
79 |
37 |
19 |
閃緑岩 |
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インド国 · プルリア (Purulia) |
建設中 |
157 |
49 |
23 |
花崗岩質片麻岩 |
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中国 · 泰安 (Taian) |
計画 · 建設中 |
180 |
52 |
25 |
花崗岩 |
(注1)「海水揚水発電技術実証試験」(経済産業省)により計画·設計·建設·運転を実施
3.奥只見増設発電所について
表-1の水力地下発電所のうち、2003年6月に営業運転開始した奥只見増設発電所について、この構造が従来にない特殊なものとなっているのでここで紹介したいと思います。
奥只見増設発電所は、地下約150mに位置している既設発電所に隣接して設けられ、増設側の空洞と、既設側の空洞が一体となる構造となっています。
図-1に地下発電所横断面及び縦断面をそれぞれ示します。
図-1 奥只見発電所·縦断面ならびに増設発電所(4号機)位置横断面
発電所の施工に当たっては、増設発電所の空洞構築により与える既設発電所空洞への影響や発破掘削に伴って発生する振動ならびに掘削時に発生する粉塵が既設発電所の発電機器に与える影響など、様々な配慮が必要であり施工も困難でありました。
発電所工事の施工状況を写真-1に示します。
写真-1 奥只見増設発電所·地下空洞施工状況(左写真:掘削中·右写真:掘削完了時)
(いずれも図-1に示した地点(赤丸で示した地点)から既設発電所側を撮影)
奥只見発電所の地下空洞は、断面積が約800m2の大断面で、そのため掘削時においては応力·歪み·緩みの変化が長期に及び、かつ岩盤の物性にもよりますが、一般に変位量も大きなものとなります。また、奥只見増設発電所の空洞は30年以上前に掘削した既設発電所の空洞と一体化することから、既設側の空洞に与える影響について入念な事前検討が必要でありました。
特に、増設発電所空洞構築の際、既設発電所側の空洞が歪むことにより、既設発電機の軸がずれ水車·発電機の回転に支障が出たり、天井クレーンレールが歪んで走行不可能になったりするなどの問題がないようにしなければなりません。
そこで、増設発電所空洞掘削においては、事前検討として逐次掘削解析を含む2次元応力解析ならびに既設発電所空洞の影響についても評価できる3次元応力解析を実施いたしました。
これらの事前予測解析で得られた結果から、増設発電所空洞を構築しても特に問題なしと判断し工事を実施いたしました。また、解析結果から、空洞支保についても検討し、本体部の支保については、ロックボルト、吹付コンクリートを基本(ロックボルト長さ5m·打設間隔1.5×1.5m、吹付コンクリート厚さ10cm)とし、PS工なしの設計としました。ただし、アーチアバット部に掘削時の大きな緩みが発生することからPS工はこの周辺には打設することといたしました。
掘削方法については主に発破工法を採用しましたが、既設発電機位置から最短距離で約20mもの近い位置で発破を行う必要がありました。したがって、既設発電機器への影響緩和のため、発破振動を極力軽減して掘削する必要がありましたが、ここでは、主として段発発破による振動制御方法を用いて掘削することといたしました。
また、段発発破を行うに当たって、雷管にはその制御が行い易い(延時時間が正確で段発も無限に設定可能な)非電気式雷管(NONEL雷管)を用いることとし、火薬についてはANFO
爆薬を用いました。なお、従来の電気式雷管では、既設発電所内に発生する可能性のある迷走電流により電気的障害を受け、誘爆の危険がありますが、NONELの場合、迷走電流、静電気、雷、電波等、電気的障害を一切受けないとされていることから、既設発電所内における電気的障害の回避の意味でもNONELを使用することは有効であったものと考えております。
施工は空洞変位·岩盤内変位·ロックボルト等の支保に発生する応力ならびに既設発電所内における発破振動のモニタリングを実施することによって、設計と施工を相互に関連付けた情報化設計施工を行いました。
増設発電所本体掘削工事は、1999年7月から開始し、当初工程通り、2000年10月に終了しました(表-2:掘削実績工程·図-2:本体掘削リフト·ブロック割図参照)。
表-2 奥只見増設発電所·掘削実績工程
図-2 奥只見増設発電所·発電所本体掘削リフト·ブロック割
(図-2 中ケーブルボルトが入っているが、これは実証試験の目的で現場施工したものであり、ケーブルトンネルより1.5m×1.5mの間隔で7本/断面×3
断面·計21本のケーブルボルトを発電所本体に向かって打設し、発電所本体部を先行補強したものです。)
本体部の総掘削量は22,300m3で、実績掘削量は月平均6,000m3、月最大9,500m3(2000年8月)でした。
なお、前述したように、基本的にはPS工なしの空洞支保の設計としたことから、掘削工程を相当短縮することができたと考えています。
また、アーチコンクリートは、鉄筋·鉄骨コンクリート構造で、H-250
の鋼製支保工建込みならびに鉄筋組立を行った後、支保工径間(内空側)に鋼板(キーストンプレート)を設置し、この鋼板を型枠にしてアーチコンクリートの打設を行う(型枠として用いた鋼板については取外しを行わない)捨型枠の施工方法を採用したことから、型枠撤去作業の省略ができ、これによっても工程短縮を行うことができたものと考えております。
掘削中、既設発電所内での異常は確認されておらず、既設発電機器への発破振動による影響についても、可能な限り小さくできたものと考えられることから、今回実施した施工において問題はなかったものと考えられます。
また、事前予測解析結果と今回得られた計測結果の傾向がほぼ一致していたことから、設計ならびに解析においても問題はなく、さらに解析結果は現場を充分再現できていたものと考えられます。
掘削完了後は、増設発電所の空洞変位は安定し、また既設発電所側空洞の安定性も確保できております。
以上、今回実施した設計·解析および施工に大きな問題はなく、また、空洞掘削による既設発電所への影響についても極力抑え、無事に掘削を完了することができたと考えております。
4.最後に
当社と岩盤力学との関係は、50年以上の歴史の中で非常に関わりの深いものとなっており、水力地下発電所などの電力土木設備においては、岩盤力学は欠かせないものとなっています。また、岩盤力学に関する技術開発は、電源の開発に伴って発展してきた部分も数多く存在します。当社においても、発電所建設を通じて岩盤力学に関わる調査·設計·施工技術の開発を実施してきました。
近年は電力需要が鈍化し、そのため発電所建設の機会が減り、その結果、これまで培ってきた岩盤力学に関わる調査·設計·施工技術の活用の機会が減ってきていることは事実ですが、今後は、発電所以外の設備、例えば石油·LPG
地下備蓄などの土木設備において、有効な技術として利用されることが期待できます。
また、当社は、岩盤力学だけでなく調査·設計·建設·維持管理に至るまで、一貫した技術力を蓄積·保有しており、これらの今まで培ってきた有効な技術力を今後活用していきたいものと考えております。
(お問い合わせ)
電源開発株式会社 エンジニアリング事業部
建設技術グループ
〒104-8165 東京都中央区銀座6−15−1
TEL:03−3546−2211(代表)
03−3546−3222(直通)
FAX:03−3546−9423
ホームページ:http://www.jpower.co.jp
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