|
1.技術センターの概要
大成建設(株)技術センターは、昭和33年に技術研究部として発足し、東京都江東区に豊洲研究所を設置しました。その後、昭和54年に横浜市戸塚区に移転し、また平成12年7月には、千葉県茜浜にあった生物工学研究所を戸塚に統合し、現在に至っています。
平成13年1月には、名称を技術研究所から技術センターに変更し、大成建設グループ全体の技術の中核として、技術開発とその成果の展開の推進・マネージメントを行う位置付けとなりました。技術センターの組織は、図-1のように5部門から構成されており、自主研究や社内および社外からの受託研究等を行っています。
図-1 技術センターの組織
2.主な保有施設
技術センターが保有している主な実験施設としては、以下のものがあります。
1.防耐火実験施設:世界トップクラスの2000トン載荷加熱炉を備え、実物規模の実証が可能です。
2.構造実験施設:1000トン構造試験機や三軸振動台を備え、構造部材の試験や模型実験を行います。
3.水理実験施設:多方向造波機を備えた沿岸海洋水槽を備え、潮汐・波・流れの影響を検証します。
4.環境実験施設:室内環境実験室や世界水準のウルトラクリーンルームを備え、空調・省エネ・環境負荷低減等の研究を行います。
地質・岩盤に関する実験装置としては、高温・高圧三軸試験機、大型三軸試験機、トランジェントパルス透水試験機、ブロック三軸試験機、遠心力載荷装置等があります。
岩盤に関する研究開発の一端として、以下にクロスホール透水試験機とケーブルボルトによる岩盤補強について紹介します。
3.クロスホール透水試験機
ダム基礎や地下空洞・トンネルなどの事前調査・施工では、ダム基礎岩盤の漏水量や掘削時の湧水量を評価するために現場透水試験が行われています。現場透水試験では、単一のボーリング孔を用いた方法が一般的ですが、試験孔近傍の局所的な透水性しか把握できないため、地下水経路である「みずみち」とその透水性を把握することは困難でした。
クロスホール透水試験は、複数のボーリング孔間の水圧応答を観測し、「みずみち」の分布や透水性を調べる新しい透水試験方法です。図-2に示したように、注水孔と観測孔内を、止水パッカーで複数の区間に区切り、ある区間から注水すると「みずみち」とつながった区間にのみ水圧応答が得られます。さらにその応答波形を解析すると、透水係数や貯留係数が求められます。
本装置の特徴は、各孔内装置はパッカーで区切られた任意の区間で注水および観測を行うことができることです。つまり、注水装置を動かさずに、試験を効率的に行うことができます。
図-2 クロスホール透水試験の概要
注水では正弦波状の波形を用いることにより、自然状態の水位変動ノイズに左右されずに精度良い計測を行うことができます。水圧計測には水頭に換算して0.1mmの水圧変化まで測定できる超高感度水圧計を使用しているため、水圧応答が微少になる広い孔間隔での測定も可能となっています。今までの試験では、深度200m、水圧応答測定距離80mの実績があります。
このクロスホール透水試験装置を使用すると調査用のボーリング間隔を広げることが可能となり、コストダウンが図れます。今後、ダム地点の貯水性能評価、地下空空洞への漏水利用予測、廃棄物処分場における基礎岩盤の止水性能評価等へ適用する予定です。
図-3 実験結果の一例
4.ケーブルボルトによる岩盤補強
ケーブルボルトとは、PC鋼より線を束ねたストランドであり、比較的容易に曲げることができるため柔軟性や取り扱いに優れています。長尺のボルトを狭い空間から広い範囲に打設することが可能なため、大断面トンネルや地下空洞の新しい支保材として注目を集めています。
しかし、ロックボルトと較べて降伏荷重は高いがグラウトとの付着力が弱いという欠点があることや、岩盤の補強効果の定量的な評価ができていないため、まだ本格的な実用化には至っていません。
当社では、ケーブルボルトの付着性能を向上させるために、ボルトの途中に膨らみを持たせたバルブ・ストランド材を国内で初めて導入し、その付着性能について実験および解析を行い、十分な付着性能を持っていることを確認しました。
図-4 バルブ・ストランド材(写真上)
ケーブルボルトの使用方法の一つとして、事前に岩盤を補強した後に掘削する先行補強工法があります。この工法の実証実験を発電所増設工事において行いました。その結果、掘削に伴いケーブルボルトに軸力が発生するとともに、岩盤の変位抑制効果があることを確認しました。
図-5 ケーブルボルト打設状況
また、長尺ボルトの他の使用方法としては、長尺鏡ボルト工法があり、ぜい弱地山や都市NATMにおいて補助工法として採用することが多くなっています。しかし、その定量的な評価ができていないために、設計法が定まっていません。当社では、ボルト等の補強材のモデル化とケーブルボルトの補強効果を定量的に評価する数値解析手法を開発しました。
下の図は、鏡ボルトを打設したときのトンネル切羽付近の最大せん断ひずみ分布を三次元解析した結果です。ボルトを打設した場合の方が、明らかにひずみ分布が小さくなっており、鏡ボルトによる補強効果が現れています。また、地表面沈下の抑制効果も期待できる結果となっています。
以上のように、室内実験・現場実験および解析により、ボルトの補強効果を定量的に評価する手法が整備できつつあります。今後は、より実証的な検討を加えて、施工への適用を図って行く予定です。
図-6 トンネル切羽付近の最大せん断ひずみ分布
5.おわりに
当社の経営理念は、「人がいきいきとする環境を創造する」です。最近の社会のニーズとしても、環境への影響を最小限にとどめた施工が望まれており、我々岩盤に関わる人間としてもこの視点からの研究開発を目指しています。
|